放射線量と被ばく

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2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、福島第一原子力発電所周辺の放射線量が増加し、様々なメディアで報道されている。 その中で比較として日常生活で受ける放射線量などが報道されている。 数値については様々な資料があり、資料によって多少数値は異なるが、おおよそ下表のようになっている。 ただ、放射線を浴びる時間が異なるものを比較するのはおかしいという声もある。 下表右端の「1時間当たりの線量」は、1年のものを1時間当たりの数値に換算した数値で、当サイトが換算したものである。

内容 実効線量
(mSv)
1時間当たりの線量
(μSv/h)
全身被ばく(死亡)(1回) 7,000 -
全身被ばく(吐き気、嘔吐)(1回) 1,000 -
全身被ばく(リンパ球の減少)(1回) 500 -
放射線作業従事者の年間線量限度(1年) 50 5.71
ブラジルのガラパリで自然から受ける放射線の世界平均(1年) 10 1.14
CTスキャン(1回) 6.9 -
自然から受ける放射線の世界平均(1年) 2.4 0.27
自然から受ける放射線の日本平均(1年) 1.5 0.17
胃のX線集団検診(1回) 0.6 -
東京-ニューヨーク航空機(往復) 0.2 -
胸部X線集団検診(1回) 0.1 -

μ(マイクロ)やm(ミリ)は、メディアの報道などで「単位が違う」などと言っているが、これはSI接頭辞というもので、単位の前に付けて1000倍や1/1000倍などを表現するために使われる。 どちらかと言うと桁が違うことになる。 パソコンなどで見られるM(メガ)やG(ギガ)と同じである。 具体的には以下のようになっている。

  • G(ギガ) = 109 = 10億・・・メガの1000倍
  • M(メガ) = 106 = 100万・・・キロの1000倍
  • k(キロ) = 103 = 1000
  • m(ミリ) = 10-3 = 1/1000・・・マイクロの1000倍
  • μ(マイクロ) = 10-6 = 1/100万・・・ナノの1000倍
  • n(ナノ) = 10-9 = 1/10億

接頭辞を使えば ゼロをたくさん書いたり、10x などを書かずにシンプルに表現できるメリットがある。

関東地方の放射線量

東北地方太平洋沖地震後、2011年3月15日に関東地方で以下のような放射線量が観測された。

  • 東京都新宿区:0.809 μSv/h = 0.000809 mSv/h
  • 神奈川県横須賀市:0.258 μSv = 0.000258 mSv
  • 千葉県市原市:0.313 μSv = 0.000313 mSv
  • 栃木県宇都宮市:1.318 μSv = 0.001318 mSv
  • 茨城県北茨城市:5.575 μSv = 0.005575 mSv

この放射線量が長時間続いているものなのか、瞬間的なものなのかは分からない。 発表された数値だけを見て危険か安全かを判断するのは難しい。 よく目安として 100mSv(1回)という数値が使われ、100mSv以上からガンの発生確率が増えるようだが、100mSv では 0.5% 程度のようだ。

μSv はマイクロシーベルト、mSv はミリシーベルトで、/h というのは1時間当たりという意味で、時速30km を 30km/h と表現するのと同じ。 1時間当たりは「毎時」と書くこともある。 1分当たりの場合は /m 、1秒当たりの場合は /s となる。

よく東京-ニューヨーク間の航空機(往復)の放射線量について耳にするが、これは宇宙線と呼ばれる宇宙からの放射線を受ける。 また自然から受ける放射線は、宇宙や大地などから放射線を受ける。 自然から受ける放射線の世界平均(1年)を1時間当たりに換算すると上表にあるように 0.27 μSv/h になる。 関東地方で観測された放射線量と比べると、この数値を超えている地域もある。 放射線量は場所によって異なり、高いところではブラジルのガラパリで 1.14 μSv/h ある。

また、茨城県はホームページ 茨城県 放射線テレメータ・インターネット表示局 で放射線量を公開している。 2011年3月18日現在、500 nGy/h を超えている場所がいくつかあった。 nGy はナノグレイ。 1 Gy = 1 Sv として換算すると 500 nGy/h は 500 nSv/h 。 500 nSv/h は 0.5 μSv/h 。

被ばく

被ばくについては英語版Wikipedia Acute radiation syndrome に症状(Symptom)や開始時間(Time of onset)などが書かれている。 これは 1Sv(1000mSv) 以上の話なのでかなり高い数値である。 例えば吐き気、嘔吐(Nausea and vomiting)は1~2Sv の場合 5~50% の確立で発症し、2~6時間で開始ということになる。 医療なしの死亡率(Mortality without medical care)や医療ありの死亡率(Mortality with medical care)なども書かれている。

チェルノブイリ原発事故では、最も高い放射線量は20,000レントゲン毎時と言われている。 放射線には様々な単位が使われており、それぞれ定義が異なり正確に換算できないが、いくつかの換算を参考に以下のように換算した。 1 R = 8.7 mGy で、R はレントゲン、mGy はミリ・グレイを指す。 1 Gy = 1 Sv で、Gy はグレイ、Sv はシーベルトを指す。 1 Gy = 0.8 Sv とする場合もあるようだが、ここでは 1 Gy = 1 Sv とした。 以上から 20,000 R/h = 174,000 mGy/h = 174 Gy/h = 174 Sv/h となる。 174 Sv/h は異常な数値である。

放射線量や被ばくについては以下のサイトが参考になった。


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