明治時代の国語辞典「言海」の読み方、気づいた点のメモ。
基本的に言海は、現代の国語辞典と同様、見出し語が50音(あいうえお)順に並んでいるので普通に辞書を引けばよいが、現代の辞書と一部異なる点がある。
通常現代の辞書では「ん」は50音の最後だが、言海は「む」の次に「ん」があり、次に「め」がくる。 「ん」で始まる見出し語はないので、2文字目でこの順に出てくることになる。 例えば、あ行では「あむ」→「あん」→「あめ」の順に載っている。
昔わ行で使われた「ゐ」と「ゑ」は、「い」と「え」とは区別されている。 つまり、見出し語を「い」や「え」で探して見つからない場合、「ゐ」や「ゑ」にある場合がある。 例えば、敷居は「しきい」で探しても載っておらず、「しきゐ」で載っている。 「ゐ」や「ゑ」はわ行なので「わ」の後に出てくる。
また、や行の「い」と「え」、わ行の「う」については、あ行を参照となっている。
言海では変体仮名と呼ばれる仮名が使われているものがある。 例えば「こ」は「古」を崩した字が用いられている。 ただ、「こ」が全て変体仮名で書かれているわけではなく、通常の「こ」と混在している。 変体仮名はいくつか種類があるが、言海では「こ」の他に、主に「し(志)」、「す(春)」、「な(奈)」が多く見られる。 変体仮名が分からない場合は、Wikipediaの項目 変体仮名 が参考になる。
以上を踏まえ、以下のような50音になる。
五十音表わ | ら | や | ま | は | な(奈) | た | さ | か | あ |
ゐ | り | い | み | ひ | に | ち | し(志) | き | い |
う | る | ゆ | む、ん | ふ | ぬ | つ | す(春) | く | う |
ゑ | れ | え | め | へ | ね | て | せ | け | え |
を | ろ | よ | も | ほ | の | と | そ | こ(古) | お |
言海は昔の辞書なので、旧字、異体字等、現在はあまり見かけない字が使われている。
例えば「亜」が「亞」、「仮」が「假」、「図」が「圖」などと書かれている。 Wikipediaの項目 字体 や 繁体字 などに説明がある。 知っている旧字体やなんとなく推測できる字もあるが、難解な字もかなりある。 言海は印刷状態が悪く、字が潰れていたりするので、なおさら分かりにくい。
言海は、合略仮名という複数の仮名文字を1つに合わせた文字が使われている。 漢字のようにも見えるので、漢字を探す人もいるかもしれない。 Wikipediaの項目 合略仮名 に説明がある。
例えば言海では「ヿ」という文字がよく出てくる。 漢字の「丁」、アルファベットの「T」、数字の「7」のような文字だが、これは片仮名の「コ」と「ト」を合わせた文字で「コト」と読み、漢字の「事」に相当する。 例えば語釈にて「・・・スルヿ」というように使われている。 ただ、「コト」はすべて「ヿ」で表記されているかというとそうでもなく、片仮名で「コト」と書かれている場合もあり、混在している。
旧字、異体字、合略仮名などの例文字 | 現在の表記や意味 |
ヿ | 事、こと |
壹 | 壱、一 |
貳、貮 | 弐、ニ |
參 | 参、三 |
拾 | 十 |
廿 | 二十 |
圓 | 円 |
價 | 価 |
稱 | 称 |
圖 | 図 |
假 | 仮 |